やはり、本当のことは、当事者の声を聞いてみないとわからないものです。
ということを再認識する機会が時々あります。
先日、ある企業のベテランの方からこんな話をお聞きしました。
「若い社員が会議で意見を言わない。当てれば言うんだけど、自分からは手を上げない。そんなに話しにくい雰囲気ではないはずなんだけど…」。
「心理的安全性」の大事さは理解していて、若手社員にも気を配っている。
なのに、意見を言わないのはどうしてだろう?と疑問に思っていたそうです。
そこで、今後の育成のため、私が社員の数人にヒアリングをすることになりました。
社員の皆さんはいたって真面目。
控えめではありますが、自分の状況や考えをしっかり話してくれました。
「会議で自分から意見を言っていますか?」と私が尋ねたところ、
「いいえ。当てられたら答えますが…」
「それはどうして?」
「…そうする必要があるとは思っていませんでした」
えっ?
と、私は胸の中で軽く驚きました。
その後お聞きしたことをまとめると、こういうことです。
先輩・上司には豊富な知識・経験からの「答え」がある。
経験の浅い自分たちでは言えることは限られている。
実際、あまり思いつかないこともある。
なのに、無理して自分から手を上げて意見する必要はないのではないか。
そう思っていたそうです。
一方の先輩・上司の方は、「どんな意見でもいいから言ってほしい」という思いから、一生懸命当てていました…。
それは意見の「質」よりも、積極的な「態度」を求めていたのですね。
そこがハッキリと伝わってはいなかった。
伝えたことがなかった。
そこに、「すれ違い」があったことが、ヒアリングを通してわかりました。
「会議で意見を言う」ことは、上位者からすると「当たり前」かもしれませんが、若手には必ずしもそうではない。
それは、心理的安全性があるなし以前に、「意見が求められている」ことが共通認識としてあるかどうかという話。
このことは、ファシリテーターである私にとっても、ある意味新鮮な発見でした。
確かに、「コスパ」「タイパ」からすると、その若手社員の言うことも一理あるかもしれません。
しかし、経験が浅くても、浅いからこそ持てる視点や若者ならではのアイディアもあるかもしれません。
また、長い目で見た時、「自分で考えて発信する」という行動や能力が身についていかないという、マイナス面もありますね。
そう言うことも含め、「なぜ意見を言ってほしいか」を、今一度自分で考えた上で説明する必要があるのでしょう。
会議で意見が出てこないと嘆く経営者や管理職の皆さんは、
「意見の内容以上に、意見を言って、みんなに貢献しようとする態度に価値がある。だから、積極的に意見を言ってほしい」等と、今一度、明確に、理由を添えて「求める」方がいいかもしれません。