先日、ある勉強会に参加していたとき、参加者の一人の方が「失敗談」を話してくれました。
その方(Aさんとします)は会社員で、一人だけ部下を持つ上司の立場。
その部下(Bさん)に、顧客に商品案内の書類を発送するよう頼んだところ、宛先を間違えて送ってしまったそうです。
書類は種類が複数あり、それぞれ顧客の層が異なっていました。
「どうして間違えたのか?」
再発防止のため、Aさんは習ったばかりのファシリテーションスキルを活かそうとしました。
一方的に叱るのではなく、Bさんに「問いかけ」をしたのです。
その時のやり取りは、こんな感じだったと言います。
Aさん 「どうして、間違えたのかな?」
Bさん 「…確認不足でした」
以上。(笑)
Aさんとしては優しく聞いたつもりであり、色々聞き方も変えたそうですが、結局、Bさんからは「確認不足」という答えしか引き出せませんでした。
無理もないと思います。
ヒューマンエラーに対して「なぜ?」と聞いた時には、「注意不足」「意識の問題」等で終わってしまいがちです。
よく、問題解決のセオリーとして「なぜ?を繰り返せ」と言いますが、場合によると思います。
「なぜ?」は、あくまで、物の故障や、工場のラインの不具合等の「物理的環境」に対しては有効でしょう。
しかし、人間を相手にする場合は、「なぜ?」には二つの問題があります。
一つは、「ネガティブ」なニュアンスがあるからですね。
問われる側はどうしても「責められている」と感じ、防衛的になってしまい、それによって、客観的に考え、話すことが難しくなってしまいます。信頼関係があれば別ですが、弱いとなおさらそうですね。
もう一つは、「なぜ?」という問いだと、「観察」ではなく、「思考」を導いてしまいがちということです。
本当は、問題解決には、現場の状況や実際に取った行動を時系列・層別で正確に「観る」ということが大事です。
「なぜ?」は、その過程をすっ飛ばして、「頭で考えた、正確ではない答え」を招いてしまいがちです。
ですので、正確にふりかえってもらう必要がある場合は、
「何を、どこで、どんな手順でやったの?」という「事実質問」を使った方がいいです。
もしくは、同じ再発防止を図るにしても、「未来志向」の問いかけをした方がいいでしょう。
例えば、「正確に発送するために、今後はどうしたらいいかな?」と。
これなら前向き、ポジティブなニュアンスなので、問われる側の心理的なハードルも下がるでしょう。
その勉強会でもそのようにアドバイスし、Aさんも納得されていました。
みなさんも納得がいきましたら、ぜひトライしてみて下さい。
今日も充実した一日を!