この記事を読む方は、「心理的安全性」という言葉はご存知かと思います。
本も色々出て、研修テーマにもよく上がるようになりました。
ただ、その意味・内容を本当に理解していますか?
と聞かれたら、いかがでしょうか。
簡単に言うと、「話しやすさ」や「風通しのよさ」という意味でいいのですが、誤解もよくあります。
それは、「仲良しクラブ」のようになることという誤解です。
とりあえず挨拶や雑談はできて、コミュニケーションは取れている、もしくは当たり障りのない会話で「いい雰囲気」ができているという状態が、「心理的安全性」のある職場というイメージです。
それなら、「ビジネスはそんな甘いものじゃない」という反発・反論や、心理的安全性に対する疑問の声が聞かれるのも無理からぬことです。
「心理的安全性」の本当の意味や目指すところはそうではありません。
「仲の良さ」や「コミュニケーションが取れている」は、あくまで「入口」です。
目指すのは、「本音で議論できる関係」であり、さらには「挑戦」です。
古い慣習を変え、現状を打破し、イノベーションを起こせること。
そうした挑戦が許され、奨励、賞賛されること。
その状態こそが、心理的安全性の究極の目標です。
つまり、一口に心理的安全性と言っても段階があるのです。

『4段階で実現する心理的安全性』という著書では以下のように解説されています。
能力や属性を問わず「仲間」として受け入れるということ。人として尊重し、挨拶を交わし、会話をし、居場所を与えるということです。
新人等学ぶ側が安心して教わることができる、ということ。躊躇なく質問・相談できること。一度でわからなくてもまた聞けること。失敗しても許容されるということです。
実際に仕事をすることと意見を言うことが安心してできる状態です。ある程度自分の考えで仕事を進めていいという安全性がなければ、創意工夫は発揮されません。また、自由に意見や提案をすることができなければ、情報共有も改善もできません。
「変化させること」が許容されている空気です。「おかしい」と思うことへの意見を歓迎すること。時代の変化を読み、新しい事業や商品のアイディアを生み出すこと。難しいことへの挑戦を奨励すること。
第2段階の「学習者安全性」は、教える側が「前も言ったよね」や「何でわからないの?」等と責めると、学ぶ側の安全性は脅かされ、「わかっているふり」や「質問・相談しない」ことでミスが続く、生産性が上がらないという問題が発生します。この段階でつまづくことが会社には多いと私は思いますが、いかがでしょうか?
第3段階の「貢献者安全性」は、そもそも、日本では意見することが組織への「貢献」だと認識している人がどれだけいるのか私は疑問ですが、みんなにそういう認識を持たせ、意見を歓迎する空気をつくらなければ改善や発展がないことは同意いただけるかと思います。
そして、最後の第4段階である「挑戦者安全性」。要は、ここが心理的安全性の「肝」であり、目指すところです。著者のティモシー・R・クラーク氏は、「挑戦者安全性」の企業にとっての重要性を、次のように説明しています。
変化のスピードが加速し、他社に対して優位性が保てる期間が短くなっている現代、「挑戦者安全性」がますます必要とされている。
これは、もちろん、簡単ではありません。
一足飛びにこの段階にも来れません。
ですので、一段階ずつ、ここを目指して組織づくりをしないといけません。
「指示待ちではなく、自発的に動け」
「勇気を持って挑戦してほしい」
等と言う経営者は多いでしょうが、それには「心理的安全性」が不可欠であり、「段階がある」ことはあまり理解されていないと思います。
経営者と社員の立場は違います。
経営者にとっては「心理的安全性」はあっても、社員の側には不足していることが一般的です。
「尊重」と「許可」。
この二つを段階的に与えていくことが、心理的安全性向上の鍵であると著者は説明しています。
結局は与える側の「度量」が問われることになるのですが、社員を人として尊重し、「聞いていいよ」「やっていいよ」「意見していいよ」「挑戦していいよ」と許可を与えていく(明確に伝える)ことが、個人と組織の成長・発展を実現していくことになるでしょう。
弊社では、そのような心理的安全性を向上し、信頼関係を強化していく研修や組織開発プログラムを提供しています。ご興味のある方はお気軽にご相談ください。