主体性とチームワークを育てたい
社長と社員が一緒になって経営理念を作成するお手伝いを、
地元西美濃の企業、太陽研磨材株式会社様にさせていただきました。
同社は、地域に根ざして長年発展してきた石材商社ですが、
文章化された「経営理念」というものがありませんでした。
ホームページに社長の思いや「大事にしたいこと」は綴られていましたが、
断片的で、経理理念としてまとまったものではありませんでした。
そのため、社員が自分達の仕事を外部にうまく説明できないということや、
目指す方向や指針を共有できず、主体性やチームワークがいま一つ育っていないというお悩みを抱えていました。
経営理念の重要性
経営理念とは、そもそも何でしょうか?
定義には色々なものがありますが、一番シンプルなものはこのようなものです。
企業の個々の活動方針のもととなる基本的な考え方。創業者や経営者によって示されたものが多い。企業内部に向けては社員の行動指針となり,企業の一員としての自尊心を高めようとする。また社会に対して企業のイメージをアピールするねらいもある。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
要するに、顧客など外部の人々=「社会」と、内部の社員の両方に向けて
「自分達はこのような存在です」と、考え方や方針を示すものです。
その具体的な内容としては、概ね、以下の3つ、または4つの要素が
含まれます(諸説ありますが、私なりに理解し、まとめたものをお伝えします)。
①ミッション(使命)…何をする会社なのか。どんなことを通して社会にどう貢献するのか。
②ビジョン(目標) …どんな会社になりたいのか。または、どんな社会を実現しようとしているのか。
③バリュー(価値観)…仕事をする上で、何を大切にするのか。
④ウェイ(行動指針)…価値観を社員の行動レベルに落とし込むと、どういう行動を取るのか。
私は今回③と④をまとめて「行動指針」として扱いましたが、
企業によって、経営理念にどの要素を入れるか、どれに重きを置くかは違っています。
いずれにしても、大事なことは、「何のために事業をするのか?」という目的意識を明確に成文化することです。それによって、「何があってもぶれない軸をつくる」と同時に、社内外の人々から「“共感”を得る」ことができます。
「単に綺麗事を並べただけの絵に描いた餅では?」と思う向きもあるでしょうが、実際、
経営理念のある会社とない会社では、業績に差があることが研究者の調査で明らかになっています。
経営理念は、企業が足腰の強い組織をつくるために欠かせない基盤です。
ワークショップ形式でみんなで考える
そこで、「対話の促進」という私の仕事をご存じの社長様から、
「経営理念を社員と一緒に作りたい」というご依頼をいただきました。
経営理念と言うと、経営者が一人で考えて作成し(コンサルタントなどのアドバイスもあるかもしれませんが)、できたものを社員に見せて理解させようとするというパターンが多いと思います。
が、それでは「絵に描いた餅」。
と言いますか、なかなか浸透せず、ましてや行動レベルに落とし込めないでしょう。
人間はやはり「自分で考えたい」生き物。
人が考えて出した答えを一方的に与えられるだけでは、「自分ごと」にするのは難しいです。
なので、作成するプロセスに社員も参加することが、その後の浸透・実践には大事。
ということで、今回は、社員数も多くないということで、社長と主だった社員6人で、
気楽に話せるワークショップ形式で経営理念を作成することをご提案しました。
経営理念を考えるための3つの問い
心がけたのは、経営理念に必要な言葉を、あまり難しくならない形で出してもらうことでした。
そのため「ミッション(使命)」「ビジョン(目標・将来像)」「バリュー(行動指針)」という
3点に絞って、それぞれ、考えやすくする「問い」を立てました(スライドの通り)。
ワークショップの1回目ではこれらの問いについて意見を自由に出していただきました。
その後、2回目までに、私が出た言葉を整理し、複数の案として文章化して、
社長の判断を仰いでまとめました。
そして、2回目では「経営理念案」を提示し、それについての社員の意見を反映して完成させました。
社長・社員共に「覚えやすい」ことを優先され、以下のようにシンプルなものに仕上がりました。
太陽研磨材株式会社様の経営理念
<私たちの理念>
私たちは、石の魅力を引き出す道具屋として、
石のことなら何でも任せられる力を強みに、
限りなく発展し続ける企業を目指します。
<私たちの約束>
一、スピード感を持った行動を心がけます
一、コミュニケーションを大切にして信頼される社員となります
一、常にお客様の心に応える行動に徹します
<私たちの理念>に「ミッション」と「ビジョン」が、
<私たちの約束>に「バリュー」が反映された形になっています。
そして、最後に、「この経営理念を実現するには、自分の仕事ではどんなことをすればいいのでしょうか?」という問いに答えていただき、各社員に経営理念を行動レベルで落とし込みました。
社員の声
参加した社員の皆様からは「仲間の価値観や会社の将来に対する意見に触れられて良かった」
「目指すところが明確になり、仕事のやる気につながる」「前向きになれる」等の感想をいただきました。
経営理念の浸透には対話を
今回は一から考えるプロセスで行いましたが、必ずしもそれが正解というわけではなく、
社長・経営層が作成したものを共有していくという形もありだと思います。
いずれにしても大事なことは、プロセスのどこかで「社員の意見を聞く」ということ。
そして、「こういう形で反映させた」というフィードバックをすることです。
「自分も参加した」という実感があることで、「綺麗事」と思われがちな経営理念も
「自分ごと」として捉えられ、行動に落とし込むことができやすくなります。
経営理念の作成・浸透でお悩みの経営者の皆さん、お気軽にご相談ください。
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