問題解決の基本は「なぜ?」を繰り返すことー
大手自動車メーカーをはじめ、
特に製造業の世界では言われてきた「セオリー」ですね。
実は、私がかつていたマスメディアの世界でも同じで、
「取材の基本は“なぜ?”だ。なぜそうしたのかを相手に聞くんだ」と、
よく上司に指導されました。
(因みに、当時の私は鈍いのか、向いてなかったのか、
こういう“疑問”を持つことが苦手で、ふんふんと聞くだけで、
肝心なことを聞かないまま戻って来て後で困るということがよくありました????)
しかし、今コミュニケーションのことを専門にしていて、
この「なぜ?」は、どちらかというと言わない方がいいと思っています。
理由は二つあります。
相手が「自己防衛的になる」からと、「解釈が入るから」です。
例えば、もしこう聞かれたら、どう感じますか?
「なぜ、できなかったの?」
「なぜ、間違えたの?」
「なぜ、納期に遅れたの?」
どこか責められているように感じないでしょうか?(笑)
聞いている方は、ただ理由を知りたいだけ、
問題を解決したいだけかもしれません。
それを相手が理性的に受け止められればいいのですが、
人間は感情の生き物です。
問題を客観的に分析するならいいのですが、
自分という人間を責められたくはないのです。
なので、問題が「機械の故障」等、純粋にハード面のことなら
「なぜなんだろうね?」と追究しても大丈夫なのですが、
こと「ヒューマンエラー」の場合は「なぜ?」で追究すると、
相手は責められているように感じてしまいます。
(と言っても、ほとんどの問題はヒューマンエラーで起きますが…)
そして、少しでも責められているように感じると、返答は、
「いや、忙しかったんで…」とか、
「いや、そもそも業務が多くて…」とか、
「指示がわかりにくくて…」とか、
要するに、「自分のせいではない」という「言い訳」に流れる傾向があります。
これが「自己防衛的」になるという意味です。
(または、ただ、「すみません」だけで、客観的分析がなされないこともあります)
なぜ?と言わない方がいい理由のもう一つは「解釈が入る」です。
例えば、「なぜ、ミスが起きたのか?」と問う時に、
問題解決に向けてその問いを持つこと自体はいいのですが、
「なぜ?」だけで問うと、答えが「頭で考えた答え」や「漠然とした答え」に陥る危険があります。
「気が緩んでいたんだろう」
「そもそも、意識が低いんだ」
「(本人が)忙しくて慌てていました」など。
人間は「なぜ?」と聞かれると、一言でまとめられるような包括的な答えを考える傾向があります。
これは「事実」というよりも「概念」です。
問題解決において、本当に明らかにしたいのは「事実」です。
「解釈」ではありません。
「何が」起きたか。
人が「何」をして、「何」をしなかったか。
それを明らかにするためには、同じ質問でも、
「なぜ?」よりは「なに?」を使う方が効果的です。
具体的に、どう使えばいいかは次回に。
なぜ、「なぜ?」と言わない方がいいのか?〜 問題解決の上手な聞き方
この記事を書いた人
井坂 泰成
合同会社ひとのわ代表社員。ファシリテーター・人材育成コンサルタント。東京大学文学部卒。NHKディレクター、国際協力NGO・JICA、コンサルティング会社等を経て創業。ファシリテーションスキルと元マスコミならではのわかりやすい説明力で、組織や地域における「対話」の支援とファシリテーションや支援型リーダー育成研修等の人材育成を行っています。