視点を変えると会議が変わる〜「6つの帽子思考法」

職業柄、会議やファシリテーションに関する本は一通り読むのですが、
最近読んだ本の中で、これは面白かったです。


6つの視点を色付きの帽子に例えて、参加者みんながそれを順に「かぶる」ことで
会議を円滑に生産的に進められるというのがこの本の主張です。


青い帽子…全体を俯瞰する視点。基本的に進行役の視点。「さて、何から話しましょうか?」等話の土台、全体像に目を向ける。
白い帽子…事実、データ、客観的情報。「その主張の根拠となるデータは?」
黄色い帽子…前向きな考え方。プラスの側面。建設的意見。「このアイディアの良いところは?」
黒い帽子…批判的な見方。マイナスの側面。懸念、障害の指摘。「このアイディアの良くないところは?」
緑の帽子…新しい発想。飛躍的発想。常識の逆転。「ありえない方法を考えると?」
赤の帽子…感情、気分、直感。「これは絶対やりたい」「この意見には、なんとなく気が乗らない」


このメソッドのポイントは、三つあります。


⒈ 生産的な議論に必要な「視点」の代表的で重要なものを分類していること
⒉ それらを視覚・色覚的にイメージしやすくしていること
⒊ 「一つの時には、全員が一つの帽子しかかぶらない」ようにコントロールすること です。


例えば、「黄色い帽子」で意見を言うよう求めている時に、
誰かが「コスト的に難しいのでは」と言い始めたら、
「それは黒い帽子の意見ですね。後でやりましょう」と諌めるという風に。


通常のファシリテーションでもこうした進行はありますが、
全員が、その時々同じ視点を共有することに意味がありますね。


この本でも指摘されていることですが、会議でよくある問題は、
一般に「黒い帽子」の人が多いということです。


それを被っていることにも無自覚で、そういう視点でしか物事を見たことがない。
他には、せいぜい「白」は被るかもしれませんが、
黄色や、ましてや緑の帽子を被って考えるという習慣があまりないのです。


それがなぜかと言うと、否定、批判は楽だからです。
何もしなくていい、自分が行動を起こさなくていいからです。


もちろん、そんな人ばかりでは会社は持ちません。
組織は成長しません。


だから、なるべく「黒」よりは「黄」や「緑」の意見がほしいところです。


ただし、だからと言って、「黒」が全く必要ないかと言うと、そうではなく、
みんながイケイケになっているアイディアの弱点や盲点や懸念材料をちゃんと検討することも必要です。


問題は、それが最初から出されてしまうことや、黄や緑よりも多く出されてしまうことや、いつでも好き勝手に出されてしまうことです。


ですので、「順番を守り」「みんなで、その時々同じ視点で考えてみる」ことが大事になります。
適切なタイミングで、全員が「黒の帽子」で考えてみればいいのです。


ファシリテーションと言うと、いろんなことが言われますが、本質的には「思考を導くこと」です。


この本は、思考を引き出す「視点」をわかりやすく提示していて、
会議にありがちな混乱や停滞をなるべく排除するシンプルな方法だと思います。



実際にみんなが色付きの帽子を被って会議したら面白いんでしょうが(笑)、
それは無理としても、少なくとも進行役がこういう帽子を頭の中に持っておくことは大いに役立つと思います。


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この記事を書いた人

井坂 泰成

合同会社ひとのわ代表社員。ファシリテーター・人材育成コンサルタント。東京大学文学部卒。NHKディレクター、国際協力NGO・JICA、コンサルティング会社等を経て創業。ファシリテーションスキルと元マスコミならではのわかりやすい説明力で、組織や地域における「対話」の支援とファシリテーションや支援型リーダー育成研修等の人材育成を行っています。