「社会人になることが楽しみに思えるようになりました。」
先日、来年度の新入社員向けの「内定者研修」という集合研修に登壇し、
事後アンケートで嬉しい回答をいただきましたが、中でも嬉しかったのがこの言葉でした。
世の中には、新入研修と言うと「厳しく言ってやって下さい!」という
人事担当者や経営者がいまだに多いと聞きますが(笑)、
私の研修ではそういうことはしません。
無意味で逆効果だと思うからです。
代わりに、こんなお話をして、考えてもらいます。
「3人のレンガ職人」
中世ヨーロッパのある街でのこと。
3人の職人がレンガを積んでいました。
そこに、一人の旅人が通りかかりました。
「何をしているのですか?」と、旅人は3人に尋ねました。
一人目「ただレンガを積んでいるんだよ。お金のためだ、仕方ない。」
二人目「教会の壁を造っているのさ。組合の評判がかかってるから手は抜けないよ。」
三人目「この街で初めての大聖堂を造っているんだ。きっと住民に喜ばれるだろう。
こんな仕事に就けて光栄だよ。」
この3人がしているのは「レンガを積む」という同じ仕事です。
しかし、何かが違います。
それは、その仕事に見ている「意味」であり、何のために?という「目的」です。
「あなたは何のために働きますか?」
「あなたがこれからする仕事は何につながっていますか?」
そう問いかけて、受講者の皆さんに考えてもらいます。
最初の問いかけでは多くの人が「お金のため」と笑いながら答えます。
「お金は確かに必要だけど、それを目的と考えていいのかな?」
そう問いかけると、自分なりに、その会社の事業や業務が
お客さんにどう役立つかを言葉にしてくれます。
仕事が、結果が求められるという意味では厳しいのは当然です。
ただ、それはやる中で分かっていくことであり、分かっていけばいい話です。
最初から厳しさの方を伝えていたら、「頑張らなければならない」と萎縮し、
不安感、義務感ばかりを感じてしまうでしょう。
それよりも最初に伝えるべきなのは、「仕事の意義」であり、「やりがい」であり、
「楽しさ」ではないでしょうか。
それは「誰かの役に立つこと」であり、「誰かを喜ばせること」。
それによって自分が喜ぶことであり、仲間と喜びを分かち合うことであり、
与えた価値を報酬という形で受け取ることであると。
そこに「意味」と「希望」を見出して、初めて「やりたい」という気持ちになり、
「どうやるのか」というノウハウの知識が吸収できるようになります。
そこを外して、「これだけのことを覚えてもらわないと困る」と、
いきなりたくさんの知識を詰め込もうとすると、本人の意欲を削いでしまいます。
先輩や経営者、そして、私も含め人生の先輩たちは、
「仕事の厳しさ」や、会社や社会人としてのあれこれを教え込もうとする前に、
まずは、「自分がどう楽しいか。嬉しかったことは何か。仕事を通して何を実現したいか」を
たくさん語った方がいいと思います。
新入社員教育で一番大事なのはそこだと思います。