社員が変わらないのは、社員のせいじゃない — ある石材商社の社長が驚いた日

組織づくりと人材育成のことなら、実績あるファシリテーターにお任せを。自走型組織、自律型組織への組織変革、組織開発、チームビルディング、リーダー育成、社員教育、会議・ミーティングの活性化をプロのファシリテーションの技術で実現します。心理的安全性を向上させ、指示待ち社員の主体性とやる気を引き出し、持続的に発展する強い組織づくりを伴走支援します。神戸を拠点に関西、東海、岐阜県、全国で対面・オンラインでの研修に対応しています。

「うちの社員は会議で何も言わないんです。結局、私しか意見を言わない」

こう嘆く経営者に、私はこれまで何度もお会いしてきました。

その度に思うのです。本当に社員には、意見がないのだろうか?と。

今回は、その問いに対する一つの答えをくれた、ある石材商社でのエピソードをご紹介します。

「社員は意見を言わない」と信じていた社長

その会社は、従業員数十名の小さな石材の商社でした。

社長は行動力があり、アイデアも豊富な方です。社員との関係も良好でした。

しかし、社内会議で、社員の意見を求めても、社員は黙っているだけでした。

「何度言っても意見が出ない。考えていないのか、やる気がないのか…」

社長はそう感じていました。

やがて「社員が自分から動かないのは、能力ややる気の問題だ」と考えるようになり、教育や研修でなんとかしようとしていたのです。

会議のやり方を一つ変えてみた

あるとき、ご縁があって私がこの会社の会議に入ることになりました。

私がやったことは、特別なことではありません。社員の皆さんが安心して発言できるように、会議の「場」を整えただけです。

具体的には、いきなり全体で意見を求めるのではなく、会議のルールを設け、まず小グループで話す時間をつくり、「正解じゃなくていいので、思いついたことを自由に出してみてください」等と声をかけました。

つまり、発言のハードルを下げる工夫をしました。

すると、どうなったか。

あの「何も言わない」はずの若い社員たちが、次々と意見を出し始めたのです。

展示会を成功に導いた「社員たちのアイデア」

テーマは、ちょうど控えていた展示会への出展についてでした。

これまでなら、社長がブースのレイアウトから展示内容まで全部決めて、社員はそれに従うだけだったでしょう。

ところがこの日は違いました。

「こういう見せ方をしたら、お客さんの目を引くんじゃないですか?」「◯◯チョコは、包装紙に社名を印字してくれますよ。配りましょう」「入り口にこれを置いたら、足を止めてもらえそうです」

若手社員から、具体的で実践的なアイデアがどんどん出てきました。

しかも、それは単なるブレインストーミングでは終わりませんでした。自分たちで出したアイデアだからこそ、「自分たちでやりたい」という気持ちが自然と芽生えた。社員たちは自主的に役割を分担し、準備を進めていきました。

結果、展示会は大成功。

社長は、こう言いました。

「社員には意見があるんだ。なかったのは、意見を出せる場のほうだった」

社員が変わったのではない。「場」が変わったのだ

このエピソードで大事なのは、社員が研修を受けたわけでも、スキルアップしたわけでもないということです。

変わったのは、会議という「場」のあり方だけ。

それだけで、社員の行動がこれほど変わった。

前回の記事(「研修をやっても組織が変わらない会社に共通する”ある特徴”」)で、「組織が変わらない原因は、社員個人ではなく”風土”にある」とお伝えしました。この石材商社の事例は、まさにその裏付けです。

社員に意見がないのではなく、意見を出しても受け止められないと感じている。あるいは、意見を出す必要がないと思っている。そういう「場の空気」が、社員を黙らせていたのです。

社長自身が「原因の一部」かもしれないという視点

少し厳しい話になりますが、大事なことなので書きます。

会議で社員が意見を言わない状態は、多くの場合、長い時間をかけてつくられたものです。

社長が先に結論を言ってしまう。社員が意見を出しても「それは違う」と否定される。いつの間にか「社長が決めるのだから、言っても仕方ない」という空気ができあがる。

社長本人にはそのつもりがなくても、結果的にそういう場をつくってしまっていることがあります。

この石材商社の社長も、社員の話を聞かない方ではありませんでした。むしろ「社員に意見を言ってほしい」と願っていた。しかし、その願いとは裏腹に、会議の場では社長が一番多く話し、一番先に答えを出していた。社員にとっては、意見を言う隙間がなかったのです。

「社員が意見を言わないのは、社員のせいだ」と思っているうちは、この悪循環からは抜け出せません。「もしかすると、自分がその原因の一部かもしれない」と思えたときに、初めて変化の入り口に立てるのです。

「場を変える」ことは、今日からできる

組織の風土を変えるというと、大がかりなプロジェクトを想像するかもしれません。

しかし、この石材商社の例が示すように、まずは一つの会議の「やり方」を変えるだけで、社員の反応は驚くほど変わります。

たとえば、こんなことから始められます。

社長が最初に意見を言わない。 
まず社員に聞く。それだけで、場の空気は変わります。

いきなり全員の前で発言させない。 
まず、付箋に書いてから話してもらう。2〜3人の小グループで話す時間をつくる。そうした工夫で、発言のハードルは下がります。

出た意見を否定しない。 「なるほど」「そういう視点もあるね」と受け止める。正しいかどうかの判断は、後でいい。

どれも、明日の会議から試せることです。

大切なのは、社員を変えようとするのではなく、社員が力を発揮できる「場」をつくること。その視点を持つだけで、組織は変わり始めます。

まとめ

社員が意見を言わないのは、意見がないからとは限りません。意見を出せる場がないから、出さないだけかもしれません。

そして、その「場」をつくるのは、社長や管理職の役割です。

まずは、次の会議で一つだけ試してみてください。社長が先に答えを言わず、社員に「どう思う?」と聞いてみる。きっと、何かが変わり始めます。

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この記事を書いた人

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井坂 泰成

合同会社ひとのわ代表社員/ファシリテーター・人材育成コンサルタント。一人一人が主体的に動いて協力する「共創型組織」づくりの対話支援と研修を行っています。東京大学文学部卒。NHKディレクター、JICA、コンサルティング会社等を経て創業。神戸市在住。