「…これはこうして、そこはこうする。わかった?」
「…あ、はい、大丈夫です」
こんな教え方、あなたの職場ではやっていませんか?
教えた側は「ちゃんと伝えた」と思っています。
でも実際には、教わる側はわかっていなくて、ミスが起きたりします。
教えた人は「あんなに丁寧に教えたのに……」とため息をつく。
でも、こういう場合の本当の問題は「教わる側」ではなく、教える側の「教え方」にあることがほとんどです。
「わかった?」は、実は何も聞いていない
何かを一頻り教えた後に、「わかった?」と聞くことは、誰しもやってしまいがちなことです。
しかし、実際には、これでは、相手が本当に理解したかどうかを確かめることはできません。
もし、「はい、わかりました」と相手が答えても、実際のところはわかりません。
わからないと言えない、質問すると怒られるかもしれない、こんなこともわからない人だと思われたくない。
教わる側には、そんな「不安」の心理が働きます。
年齢が若かったり、入社したばかりの人ならなおさらです。
最近の若い方はよく「大丈夫です」と答えますが、それが必ずしも「理解した」と言うことを意味するとは限りません。
ということを、教える側はよくよく踏まえておく必要があります。
教える側がやりがちな「NGパターン」
教える側が無意識にやってしまいがちな行動と言葉には、こんなことがあります。
【行動のNG】
- 相手を安心させない 「一度しか言わないから、しっかり聞いて」——こう言われた瞬間、相手は緊張します。緊張した状態では、情報は頭に入りません。逆に「わからなかったら何回でも聞いて」と一言添えるだけで、相手の受け取り方はまったく変わります。
- 一度に全部言う 5つの手順を一気に説明して「わかった?」と聞く。これでは前半はもう忘れています。
- 相手の反応を見ずに話し続ける こちらのペースで説明を進め、相手が困惑していてもお構いなし。「独演会」になってしまっています。
- 質問する機会を与えない 「じゃあやってみて」と畳み掛けてしまう。「何か聞きたいことある?」の一言が、後のミスを防ぎます。
- 理解度を確認しない 何を理解し、していないかを確認しないまま終わる。
【言葉のNG】
- 「さっきも言ったよね?」 一度言った=伝わった、ではありません。この言葉は相手の「聞けない」状態を加速させます。
- 「そんなこともわからないの?」 知識には「落差」があります。わからないのは当然です。この言葉が出た時点で、学びは止まります。
- 「これができないとダメだよ」 プレッシャーは、緊張を生み、思考を止めます。
- 「普通はこうするんだよ」 その「普通」は、あくまで経験者の普通です。初めて聞く人に「普通」はありません。
- 「早く覚えてね」 悪気はなくても、相手にプレッシャーを与えるだけの余計な一言です。
心当たりはありませんでしたか?
どれも悪意のある言葉ではありません。でも、受け取る側には深く刺さっています。
「知っている人」と「知らない人」の間には、深い落差がある
ここに、教える側が見落としがちな根本的な事実があります。
こちらはすでに知っている。向こうはまだ知らない。
当たり前のことのようですが、これが実はとても大事な前提です。
知識や経験が増えると、人は「知らない状態」を忘れてしまいます。
この「知っている人と知らない人の落差」を自覚することが、教え方の出発点です。
さらに言えば、どんなに丁寧な説明でも、一度に頭に入る情報量には限界があります。
特に初めて聞く内容は、理解するのに時間がかかります。
かつ、それが視覚資料なしに「口頭だけの説明」の場合、記憶に残すのは困難です。
「説明した=伝わった」は、残念ながら成り立ちません。
本当に有効な「確認」とは何か
では、どうすればいいのでしょうか。
まず最初のステップは、問いを変えることです。
「わかった?」ではなく、「わかりにくかったところはある?」と聞く。
「わかった?」には「わかりました」しか答えにくいですが、「わかりにくかったところはある?」なら、素直に「ここが少し……」と言いやすくなります。小さな一言の差が、相手の「言える」状態をつくります。
次のステップは、相手に説明させることです。
「今説明したことを、分かった部分だけでもいいから自分の言葉で教えてみて」と伝えてみましょう。説明できるということは、本当に理解しているということです。逆に言えば、うまく説明できない部分が、まだ伝わっていない部分です。
他にも、こんな確認の仕方が有効です。
- 「今の作業のポイントをあげてみてくれる?」
- 「間違えそうな部分はどこだと思った?」
「難しそうな部分」を言語化させることで、潜在的な「わからない」を引き出せます。
「小分け」と「繰り返し」が定着をつくる
また、説明は「一気に全部」より「小分けにして確認しながら」の方がはるかに効果が高いです。
手順が5つあるなら、1つ説明して確認、次を説明して確認——という積み上げ方をします。「全部説明してからまとめて確認」では、前半はもう忘れています。
そして「1回教えたら終わり」ではなく、翌日・翌週に「あれ、どうだった?」と確認を重ねることで、記憶は定着していきます。教えることは、一度のイベントではなく、プロセスです。
知識の一早い定着には、「短期記憶を繰り返す」ことが有効です。
今日から使える「正しい教え方」チェックリスト
NGパターンの逆が、そのまま有効な教え方になります。
【行動】
- 「わからなかったら何回でも聞いて」と最初に伝え、安心できる場をつくる
- 手順をひとつずつ小分けにして、確認しながら進める
- 相手の表情や反応を見ながら、ペースを合わせて話す
- 説明の後に「何か聞きたいことある?」と質問の機会をつくる
- 最後に、「じゃ、ポイント・手順を説明してみて」と、相手にアウトプットの機会を与える。
【言葉】
- 「さっきも言ったよね?」→「もう一度一緒に確認しようか」
- 「そんなこともわからないの?」→「そこ、わかりにくいよね。私も最初そうだったよ」
- 「これができないとダメだよ」→「少しずつできるようになれば大丈夫だよ」
- 「普通はこうするんだよ」→「この仕事では、こうするのが基本なんだよ」
- 「早く覚えてね」→「その調子で覚えてね」
まとめ:教えることは「伝えた」ではなく「伝わった」で完成する
- 「わかった?」は確認になりません。まず**「わかりにくかったところはある?」**と聞きましょう
- 知っている人と知らない人の間には深い落差があります。それを自覚することが出発点です
- 情報は一気に入りません。小分けにして確認しながら進めましょう
- 理解は繰り返しの確認によって初めて定着します
- 安心できる場をつくることが、すべての前提です
「わかった?」ではわからない。
「伝えた」は「伝わった」じゃない。
これを頭に置くだけで、あなたの教え方は今日から変わります。
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