「社員が指示待ちで育たない」と嘆く社長が見落としている“たった一つの問題”

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「社員が言われたことしかしないんです。もっと考えて動いてほしいのに…」

中小企業の経営者から、私はこの言葉を本当によく耳にします。

経営者としては、「もっと主体的に動いてほしい」「自分で考えて提案してほしい」と願いますよね。


しかし現実は、社員は指示待ちになりがちで、社長が細かく指示を出さないと仕事が回らない。

結果、社長は疲弊し、社員も成長しないという悪循環に陥ります。

ここで多くの経営者が誤解しているのは、「社員が自分で考えないのは、能力ややる気の問題だ」ということ。


実はそうではありません。

社員が「言われたことしかしない」会社には、ある“共通点”があるのです。

第1章:なぜ社員は「言われたことしかしない」のか

1-1. 社員のやる気や能力の問題ではない

「社員が動かないのは、本人が怠けているからだ」
「最近の若い人は自分で考えない」
。こう感じたことはありませんか?


しかし、実際に現場でヒアリングしていると、社員はこう言います。

  • 「どうせ社長が決めるから、意見を出しても無駄だと思っている」
  • 「間違ったら怒られるので、正解が出るまで動けない」
  • 「何がゴールかわからないから、最低限のことしかできない」

つまり、社員が自ら考えないのは、“考える必要がない環境”になっていることが多いのです。

1-2. よくある悪循環

実際の中小企業でよくあるケースを見てみましょう。

  1. 社長が全ての意思決定をする
  2. 社員は「決める必要がない」ので考えなくなる
  3. 社長は「やっぱり社員は頼りにならない」と思い、さらに細かく指示
  4. 社員はますます受け身になる
  5. 結果、社長は疲弊し、社員も成長しない

この悪循環が続く限り、主体性は育ちません。
原因は社員の性格ではなく、会社の仕組みや文化にあるのです。

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ここで気をつけたいのは、社長本人は全てを自分が意思決定しているとは思っていないケースです。

「こういう事やってみたら?」等、意見やアイディアだけを出しているつもりの場合があります。

しかし、社員にとっては(特に経験が浅い若手にとっては)社長の意見に疑問を投げたり、反論するのは難しいこと。

また、それが「朝令暮改」で繰り返されることもよくあります。

社長は気軽に思いつきで意見を出し、変える。社員はそれに振り回される。それでは社員は疲弊し、やる気をなくします。

仕事を進めるには「計画性」が大事です。

現場の業務レベルの話であれば、社員に決めさせ、計画を持たせ、その間は口出ししないで「任せる」という姿勢が社長には必要です。

第2章:会社が見落としている“たった1つの問題”とは?

それは、結局、「社員の自律を阻む仕組み」です。

社員が自ら考え、動き、提案するためには、「心理的安全性」と「現場レベルの意思決定の権限移譲」が必要です。


しかし、多くの会社では次のような仕組みが社員の自律を阻んでいます。

  • 意思決定がすべて社長に集中している
→ 社員は「社長の答え待ち」になる
  • 目標や評価基準が不明確
→ 自分で判断できず、正解探しをする
  • 失敗を許さない文化
→ 挑戦せず、安全策を選ぶ
    つまり、社員が主体的に動かないのは、社員の問題ではなく会社の問題なのです。

第3章:今日からできる“社員が自ら動き出す”3つのステップ

ここからは、実際に私がコンサルでお伝えしている、社員が主体的に動き出すための3つのステップをご紹介します。

ステップ1:現場レベルの意思決定を社員に委ねる

最初からすべてを任せる必要はありません。
まずは小さなプロジェクトやタスク単位で「決める権限」を渡しましょう。

例:

  • 営業戦術の一部(顧客、媒体、アプローチ方法等)を決めてもらい、計画を持たせる
  • 新商品のキャッチコピーは担当者が決める
  • 会議で使う資料の構成は社員が考える

重要なのは、「任せたら口を出さない」こと。
失敗してもいいので、社員に「自分で決めた経験」を積ませることが、自律型組織の第一歩です。

ステップ2:問いかけの質を変える

多くの経営者は、社員が期待どおりに動かないと、ついこう言ってしまいます。
「なんでやってないんだ?」
「もっと早くやれ!」
しかし、この言葉は社員を委縮させ、さらに受け身にさせてしまいます。
代わりに、次のような問いかけをしてみてください。

  • 「どうしたらうまくいくと思う?」
  • 「次にやるとしたら、どんな方法がある?」
  • 「この件について、君の考えを聞かせてくれる?」
    問いかけの質を変えることで、“答えを与えられる社員”から“答えをつくる社員”へとシフトしていきます。

ステップ3:成功体験を共有し、褒める

社員が自ら考えて動いたとき、成果が出たかどうかに関わらず、必ず承認することが大切です。

  • 会議で「○○さんの提案で進めた件、助かりました」と発表する
  • 社内チャットで「○○さんが率先してやってくれました!」と共有する
  • 月報や社内報に「成功事例」として掲載する

こうした「承認の文化」が生まれると、社員は安心して挑戦できるようになります。

第4章:成功事例 ― 指示待ち社員が変わった会社

実際に私が関わった、従業員10名前後の岐阜県の内装業の事例をご紹介します。

この会社では、社長がすべてを決めていたため、社員は言われたことしかしませんでした。


そこで、まず社長にお願いしたのは「一歩引く」こと。


業務改善のプロジェクトを行い、その中で管理職社員に決定権を与え、進捗管理だけを社長がサポートする形にしました。

結果、社員から自主的な提案が増え、3ヶ月で営業の業務改善アイデアが3つ生まれ、業務効率が向上しました。

社長も「社員がこんなに考えていたなんて驚いた」と喜んでくれました。

まとめ

  • 社員が「言われたことしかしない」のは、社員の能力ややる気の問題ではない
  • 社員の自律を阻む仕組みがある限り、主体性は育たない
  • 現場での意思決定を任せ、問いかけの質を変え、成功体験を共有することで、社員は動き出す

自律型組織は、一朝一夕ではつくれません。
しかし、経営者が最初の一歩を踏み出せば、社員は必ず応えてくれます。

「社員の主体性を引き出したいけれど、どこから手をつければいいかわからない」
。

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この記事を書いた人

組織づくりと人材育成のことなら、実績あるファシリテーターにお任せを。自走型・自律型組織への組織変革、チームビルディング、リーダー育成、社員教育、会議・ミーティングの活性化をプロのファシリテーションの技術で実現します。心理的安全性を向上させ、社員の主体性とやる気を引き出し、持続的に発展する強い組織づくりを伴走支援します。神戸を拠点に関西、東海、全国で対面・オンラインでの研修に対応しています。

井坂 泰成

合同会社ひとのわ代表社員/ファシリテーター・人材育成コンサルタント。一人一人が主体的に動いて協力する「共創型組織」づくりの対話支援と研修を行っています。東京大学文学部卒。NHKディレクター、JICA、コンサルティング会社等を経て創業。神戸市在住。