先日、ある町で一番人気のあるラーメン店に行きました。
午前11時過ぎに着いたのですが、休日ということもあり既に行列ができていて、
待ち時間は「1時間ほどですかね」と言われました。
さぞや美味しいのだろうと期待を膨らませつつ並んでいると、
女性の店員さんが何度も列に来て、人数を尋ね、注文を先に取り、
お客さんの質問に答えていました。
さて、1時間余り経ち、無事店に入ってカウンターに座ると、
店主とおぼしき人が開口一番語りかけてきました。
「長い時間お待たせしてすみませんでしたね。ごめんなさいね」
私は、こういう言葉を全く予想していなかったので、
麺食らって、じゃなくて、面食らって何も返せず頷いただけでした。
普通、人気店というと、味に自信がある分客には愛想が悪かったり、
忙しさから店員同士もピリピリした雰囲気があるというイメージがあります。
ですが、この店は、店員は明るくて、和気あいあいと会話をしていました。
また、外では行列ができていても、店内には客を並ばせず、詰め込ませず、
ゆったりした、落ち着いて食べられる雰囲気があり、ちょっと意外でした。
客を大事にしているんだなと感じました。
そして、こんな会話を聞いて、この店がどんな店であるか腑に落ちました。
調理しているベテラン風の店員が、店で最年少と思える若い女性の店員に対して、
何かを指示する度にこう言っていたのです。
「あれ、もう仕舞っといてくれる?」
「あ、もうやっときました」
「そうか。ありがとう」
「これ、できたから」
「はい、行ってきます」
「ありがとう」
私の記憶では、失礼ながらラーメン屋さんでこういう会話を聞いたことがありません(笑)。
ともすれば、先輩は後輩に、キツい言葉を投げることがありがちだと思います。
それはラーメン屋さんに限らず、どんな店でも、会社でも同じです。
一番下の立場の人に対して、やってくれたことに感謝の言葉をかける。
これはなかなかできないことです。
私は普段研修で「人に動いてほしかったら承認と感謝を」とお伝えしていますが、
正にそれを自然体で実践している感じでした。
ここまで、味のことには全く触れませんでしたが、
もちろん、味は絶品でした。
行列ができるのも納得です。
ですが、私には、このお店の人気の秘密はそれだけではなく、その根底にある
味をそこまでの味にした「謙虚さ」であり、人を大事にする姿勢であると思いました。
「関係の質が成果の質を決める」という
「組織の成功循環」の法則を目の当たりにした気がします。
あなたは、部下に、同僚に、あるいは子供に、
「ありがとう」と言っていますか?
人気店から学べることでした。
行列1時間待ち人気ラーメン店の秘密
この記事を書いた人
井坂 泰成
合同会社ひとのわ代表社員。ファシリテーター・人材育成コンサルタント。東京大学文学部卒。NHKディレクター、国際協力NGO・JICA、コンサルティング会社等を経て創業。ファシリテーションスキルと元マスコミならではのわかりやすい説明力で、組織や地域における「対話」の支援とファシリテーションや支援型リーダー育成研修等の人材育成を行っています。