「一人一票」はもう古い?~新時代の投票方法「クアドラティックボーティング」

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自分の票を誰か一人に投じる。

常識とも言えるこの投票方法ですが、本当に合理的でしょうか?

最近統一地方選がありましたが、私の住んでいる垂井町でも町議会議員選挙があり、13人の定数に対して14人が立候補しました。

私は悩みました。

知っている方だけでも最低3人ぐらいは推したかったからです。

それぞれの方に良さがあり、推す理由も異なります。

誰か一人を選ぶとなると、他の候補者には私の力が届かない、私の思いが反映されないことになります。

これは公職選挙に限らず、地域・組織で「誰かを選ぶ」場合や、政策、アイディア、対策を複数の中から選ぶ場合、つまり、およそ物事を「決める」場合に共通する話です。

「一人一票」は、結論的に言うと、実は意思決定の方法としてはかなり「大雑把」なのです。多様なニーズを正確に反映しないので。

ですので、ファシリテーションの現場では、最後に意見を選ぶ際に「シール投票」という方法を取ることがよくあります。

10枚等、複数のシールを各参加者に配り、支持する意見に、「推す」分だけ好きな枚数のシールを貼ってもらうのです(上限を設ける場合もあります)。

そうすると、大抵、一つの意見に偏らず、適度に分散します。少数意見も切り捨てられず、全員の意向が比較的正確に反映されます。そして、シールの多い順に「優先順位」を付けるという考え方、決め方をします。

(AかBか?という選び方だと、どうしても選ばなかった方を「切り捨てる」という感覚になってしまい、角も立ちます)

ポイントは「複数の票を持ち、配分すること」にあります。

今日ご紹介したいのは、この方法を、さらに科学的?に洗練させた「クアドラティックボーティング」という投票方法です。

無料で作成できるクアドラティックボーティングのページはこちら↓(解説あり)

https://quadraticvoting.jp

コロナ対策で注目された台湾の「天才」デジタル大臣オードリー・タン氏が紹介したことから、今世界中に広がっています。民主主義のリーダーとして大尊敬する方ですが、私もオードリーさんの著書で知りました。

「クアドラティック(Quadratic)」は「二乗」という意味で、この方式のポイントは「投じた票数を二乗したポイントを消費する」という点にあります。

簡単に説明すると、以下の通りです。

 ・一人の所有ポイントは99点。
 ・もし誰かに2票入れたら、「2× 2=4点」を使う。3票なら9点を使う。
 ・最大9票(81点)を一度に使えるが、残りの点は別の選択肢にできる限り投票することが勧められる。

つまり、一つの選択肢に票を集中させるとそれだけコストがかかることになり、票の偏りを防ぎ、できるだけ分散させることに狙いがあります。

実際、私も今回の選挙で有志と試してみましたが、確かに票は支持を反映しながら分散しました。

参加した有志の感想としては、好意的なものばかりでした。

「誰かに1票を入れるよりも民意が反映されるのではないかな?と思いました。」

「候補者それぞれいい政策を持っていますからそこを評価するには良い手法ですね????」

「個人的には、持ち点投票はとても良いと思います。1人1票の投票は、人格肯定と人格否定をはっきりさせてしまい、落選した人の事を思うと少し辛いなー。以前から思っていたからです。」

リスク面としては分散することによって、票の配分が均等に近かった場合には決めにくくなるということがあるかもしれません。(その場合は「推した理由」をさらに明らかにして、選び直すといいかもしれません)

とは言え、民意をより正確に反映するという意味ではとても優れた投票方法であり、決め方であると私は思います。

選挙では人や政策、会議では意見の内容にばかり関心が行きがちで、「決め方」は疎かにされがちですが、みんなの意見を反映させ、より良い決定を下すためには、実は、「決め方」が大事です。

社会全体で、「決め方」をアップデートさせていく必要があるのではと思います。

皆さんの現場でも試してみて下さい。

(会議等の「決め方」についてお悩み、お困りごとがある方は、最下段のフォームからご気軽にご相談下さい)

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この記事を書いた人

井坂 泰成

合同会社ひとのわ代表社員。ファシリテーター・人材育成コンサルタント。東京大学文学部卒。NHKディレクター、国際協力NGO・JICA、コンサルティング会社等を経て創業。ファシリテーションスキルと元マスコミならではのわかりやすい説明力で、組織や地域における「対話」の支援とファシリテーションや支援型リーダー育成研修等の人材育成を行っています。