「どうして、ファシリテーターになろうと思ったのですか?」と、時々聞かれます。
プロフィールを見ていただければわかるのですが、私は元々テレビ局のディレクターを
していました(その後、紆余曲折いろんな経験をすることになるのですが…)。
ある方から言われてハッと思ったのですが、「ディレクターとファシリテーターでは
真逆でしょ。切り替えるのが難しくなかった?」と。
確かに、ディレクターはその名の通り、「監督」です。
カメラマンはじめ、みんなに指示を出さないといけない立場です。
自分がしっかりしたビジョンを持っていて、それをみんなに伝え、
説得していくことが主な役割です。
(私はそれが苦手だったので辞めたようなものですが…????)
一方、ファシリテーターは、基本的には「聴く」人です。
みんなの考えを聴いていきながら、それを最大限生かそうとします。
この二つの立場が最初はせめぎ合いつつも、次第にシフトしていったのが、
NHK退職後に従事したアフリカでの国際協力事業のマネジメント時代でした。
かつて取材をし、関心を持つようになった業界、団体で勤務したわけですが、
全くの未経験にも関わらず、いきなり事業統括・駐在代表として赴任したので
とても苦心することになりました。
「ディレクター」としての役割があり、自分にもそういう「癖」が残っている。
ので、同僚や現地人スタッフと衝突することもよくありました。
また、こちらの計画や指示だけで物事を動かしていると、
「次は何をしてくれるの?」と、住民を依存的にさせた事にも気付かされました。
育成していたボランティアグループも、トラブルばかり起こして、問題解決が
なかなか図れませんでした。
「問題は、こちらの関わり方にあるのでは」。
そう思い始めてから、事務所スタッフの自主性を尊重して「無理かもしれないけど、
やらせてみる」ことをしたり、ボランティアグループの会合を彼らに任せて
「促す」という風に、やり方を変えて行きました。
そうすると、面白いもので、グループは、どこで学んだのか、会の規約を新たに
自分たちで作り、役員を刷新して、行動を決めていきました。
「あぁ、もっと促す関わり方をすればよかったんだなぁ」と反省しました。
事務所スタッフとは毎日ミーティングをして、良きチームとしてまとまり、
プロジェクトも一応成功に終わりました。
一方で、私が独断で動かしすぎた事もあって、一部のスタッフとは関係が
ギクシャクしてしまい、それが悔やまれて心残りで、帰国時の機内で泣きました。
そんな、「上手くやれた」経験と、「上手くやれなかった」経験の両方が
私がファシリテーターを志すことになったきっかけです。
人をまとめていくには、「こうした方がいいですよ」とお伝えしたいし、
あの苦い思いを他の人には味わってほしくない。そんな願いがあります。
「人と人が上手くやっていくにはどうしたらいいか?」
それが、今の私を動かしている「問い」です。
ファシリテーターとして、その問いに答え続けていきたいと思っています。
ファシリテーターを志したワケ
この記事を書いた人
井坂 泰成
合同会社ひとのわ代表社員。ファシリテーター・人材育成コンサルタント。東京大学文学部卒。NHKディレクター、国際協力NGO・JICA、コンサルティング会社等を経て創業。ファシリテーションスキルと元マスコミならではのわかりやすい説明力で、組織や地域における「対話」の支援とファシリテーションや支援型リーダー育成研修等の人材育成を行っています。