本当の「主体的な学び」を引き出すには?〜ある学校の授業見学から気づいたこと

ファシリテーションのことなら、岐阜県唯一の専門家にお任せを。ファシリテーションとは会議を円滑に進行し、チームの力を最大限に引き出すこと。ファシリテーターとは単なる司会ではなく意見とやる気を引き出す役割。中小企業等の組織活性化、心理的安全性の向上、風土づくり、チームビルディング、SDGsの促進等に必須のスキルです。管理職等の人材育成、社員教育に、その意味や手法、コツを研修や講座でお教えします。オンライン会議、WEB会議も対応。地域は岐阜、愛知、名古屋、東海地方はじめ全国に対応

昨日、岐阜県内のある中学校に招かれ、先生方の授業を見学して、ファシリテーションのアドバイスをいたしました。

その時気づいたことが、企業等での社員教育にも通じると思い、シェアします。

その学校は、今国が推進している「主体的な学習」に熱心に取り組んでおられ、学校全体で研究会を重ねてきました。

「学びを深める問いかけ」や「グループでの学び合い」等研究される中で、ファシリテーションについて体系的に学びたいということで、私に声をかけていただきました。

昨日は、音楽の授業で大学を卒業したばかりの若い先生が担当していましたが、昔のように講義と練習を繰り返すのではなく、終始問いかけがあり、グループ活動があり、生徒自身の主体性を引き出そうとする「ファシリテーティブ」な働きかけが行われていました。(私が子供の頃とは隔世の間があります…)

「主体的な学習」に熱心に取り組んでおられることがよくわかります。

しかし、一方で、私の目には、生徒たち自身が楽しんでいる感じ、自発的に動き、学び合っている感じがそれほどないように映りました。

もうちょっとイキイキとしててもいいのでは、と思いました。

何かが足りないのです。

それは、「動機づけ」です。

生徒たち自身が「学びたい」「音楽って楽しいな」と思えるような最初の働きかけです。

確かに、冒頭、先生から「今日の課題(技術的なこと)」は提示されました。
それは明確でした。

ただし、それは授業カリキュラム上「やることになっていること」であって、生徒自身が「やりたいこと」であるかは別の話です。

生徒自身が「上手に歌うにはそれは必要だ」と学ぶ意義を理解したり、「それはおもしろそうだな」と感じて、初めて、意欲を持ち、主体性が生まれてくるものだと思います。

もちろん、学校教育では計画された課題があるでしょう。

ただ、だからと言って、それをそのまま生徒たちに押しつけたのでは、いくら授業進行の中で問いかけを工夫し、グループワークを重ねても限界があります。

喉の渇いていない馬に水を飲ませることはできない” のです。

ということで、授業終了後のふりかえりの時間で、私は、よかった点をたくさん讃えた上で、以下のようなアドバイスをしました。

「動機付け」がもう少しあるといいと思います。
それには、必ずしも、問いかけではなく、先生自身が音楽を楽しんでいる様子や、この課題曲がいかに素晴らしいか、どこが面白い・素敵かを熱く語ることも有効ですよ。

その若い先生はすごくうなづいて、熱心にメモを取ってくれました。

私が中学生の時、一番印象に残っている先生は理科の先生でした。

理科はあまり好きではなかったのですが、その先生のおかげで興味を持ち、理解することができました。

なぜかと言うと、その先生からは自分自身が理科が大好きで面白がっている雰囲気が伝わってきたからです。説明も微に入り細に入りで、聞いていて飽きませんでした。

教える側がそれを楽しんでいること。

それの意義や良さを体感し、表現していること。

学ぶ人にとって、その影響は大きく、それがあると、「へー、面白そう」「自分もやってみたい」となるはずです。

そのふりかえりでは、私の後、他の先生からも「こんな合唱ができたらいいね」というゴールイメージを最初に示すこと、という助言がありました。

これももっともで、私も勉強になりました。


企業等の組織においても同じことが言えると思います。

新入社員や若手社員を教育しようとする際、とかく、彼ら彼女らにあれこれ教えたり、主体性の発揮を求めたりします。

それはそれで必要ではありますが、それを効果的にするには、その前にやるべきことがあると思います。

それは、先輩・上司・経営者がイキイキと仕事をしている姿を見せることです。

自社の仕事の意義を語り、夢を語り、毎日楽しく働いている姿を見せる

そうすれば、若い社員も自然と「自分もこうなりたい」と思えるでしょう。

あらゆる教育は、その後に来なければ本当の意味で主体性を引き出すことはできないと思います。

まとめると、

⒈ 自分が楽しみ、その姿を見せること。
⒉ 素敵なゴールイメージを共有すること。
⒊ そうして、教える側の考える課題を、学ぶ側にとってもゴール達成に必要だと感じさせること。

これが、相手の主体的な学びを引き出すのに不可欠な「動機づけ」であり、小手先ではないファシリテーションです。

それは言い換えると、相手を、「教えるべき対象」ではなく、「自ら学ぶ主体」として尊重するということでもあります。

お読みいただき、ありがとうございます。

今日も良い一日をお過ごしください!

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この記事を書いた人

井坂 泰成

合同会社ひとのわ代表社員。ファシリテーター・人材育成コンサルタント。東京大学文学部卒。NHKディレクター、国際協力NGO・JICA、コンサルティング会社等を経て創業。ファシリテーションスキルと元マスコミならではのわかりやすい説明力で、組織や地域における「対話」の支援とファシリテーションや支援型リーダー育成研修等の人材育成を行っています。