「社員がなかなか主体的に動いてくれない」
「結局、自分が指示を出さないといけない」
「仕事を自分事にしてほしい」
そんな悩みを口にされる経営者の方は少なくありません。
中には、「もっと主体的であれ」と「指示」してしまう方も。
しかし、それでは逆効果です。
社員に「もっと自分で考えて動いてほしい」と願うなら、まず経営者自身が変えるべき視点があります。
それは―― “社員にとって、この会社の仕事を自分のものと思える環境をつくること” です。
1. 「自分事」とは何か
「自分事」とは、単に責任を押し付けられた状態ではありません。
「この仕事は自分がやるべきだ」「自分の工夫で良くしたい」と感じられること。
つまり、 責任と権限の両方が与えられ、そこに意味を見いだせる状態 を指します。
経営者が「これはこうしなさい」と、自分の考えを一方的に押し付けるだけでは、社員は“やらされ感”を強めるばかり。
逆に、「自分の考えや判断が尊重されている」と感じるとき、人は自然と自分事として動き始めます。
2. 経営者がまずすべきことは「語る」こと
社員に自分事を求める前に、経営者自身が 「なぜこの会社が存在するのか」「なぜこの事業を続けるのか」を語ることが不可欠です。
人は、単に「売上を上げる」や「コストを下げる」といった数字目標だけでは心から動けません。
その背景にある理念や社会への価値を経営者が語り、社員がそれを共有できるとき、仕事に意味を感じ、自らのものとして取り組みやすくなります。また、社員を大切に考えているという思いを伝え、それを形にしていくことも忘れてはいけません。
3. 「対話」の場をつくる
とはいえ、経営者が一方的に語るだけでは十分ではありません。
社員がそれを自分の言葉にし、日々の業務とつなげて考えられるようにするには、対話の場 が必要です。
対話の場では、
- 経営者が社員の声に耳を傾けること
- 社員同士が意見を交わし、気づきを得ること
が大切です。
ある製造業の企業をお手伝いしたときもそうでした。
「欠品ゼロ」を掲げていたものの、長年達成できずにいたのですが、定期的な対話の場をつくり、相互理解と自由な発想をご支援する中で、次第に社員の自発性が高まりました。
その結果、一人の社員が自ら工夫を凝らし、これまで誰もできなかった「欠品ゼロ」を成し遂げたのです。
それは経営者が社員にやり方の“正解”を示したからではなく、社員自身が「これは自分の課題だ」と腹落ちした瞬間に生まれた成果でした。
4. 「任せる」勇気を持つ
最後に重要なのは、経営者が社員を信じて任せることです。
社員が挑戦する過程では、時間がかかったり、失敗があったりするでしょう。
それでも口を出しすぎず、社員自身の学びと成長の機会に変えていく。
この「任せる」姿勢がなければ、社員はいつまで経っても“指示待ち”から抜け出せません。
ありがちなのは、社長が現場の「TO DO」レベルの事に自分の考えを出してしまうこと。
社員はそれを「指示」と受け止めてしまいます。
また、社長が方針をコロコロを変えること。
これでは、社員は一貫して、自分の考えで進めていくことができません。
一旦方針を決めたら、社員に計画を立ててもらい、それを承認して、口出しせずに任せる。
こういう姿勢が経営者には必要です。
まとめ
社員に仕事を「自分事」としてもらうために、経営者がすべきことは――
- 会社の理念や方向性を語る
- 対話の場をつくる
- 信じて任せる
この3つです。
社員の自発性は、仕組みやルールで無理やり引き出すものではありません。
「自分の考えを大切にされている」 という実感があって初めて芽生えるものです。
経営者が「人を信じる」覚悟を持つこと。
そこから、社員が仕事を自分事としてとらえる文化が育っていきます。

