若手社員が主体的に動かない——現場でできる3つのアプローチ(第3回:意義)

組織づくりと人材育成のことなら、実績あるファシリテーターにお任せを。自走型組織、自律型組織への組織変革、組織開発、チームビルディング、リーダー育成、社員教育、会議・ミーティングの活性化を、対話を促進するプロのファシリテーション技術で実現します。心理的安全性を向上させ、指示待ち社員の主体性とやる気を引き出し、持続的に発展する強い組織づくりを伴走支援します。神戸を拠点に関西、東海、岐阜県、全国で対面・オンラインでの研修に対応しています。

あなたの仕事は何につながっていますか?

前回は「承認」——相手のことを「ちゃんと見ている」と伝えることの大切さについてお伝えしました。

今回は、第2の要素「意義」についてです。

意義とは、「自分の仕事が何かとつながっている」という実感です。

突然ですが、一つ質問があります。

あなたは、自分の仕事が何につながっていると思いますか?

精密な部品をつくることで、効率的なものづくりを支えているかもしれません。

利用者に寄り添う介護で、幸福な老後を支えているかもしれません。

弊社ひとのわでいえば、組織開発と研修の仕事が「組織に調和をもたらす」ことにつながっていると考えています。

自分たちの仕事が、何につながっているのか。それを言葉にすることが、仕事に「意義」を見出すということです。

意義が見出せれば、「やる気」が生まれてきます。

意義は、意識しなければ見えてこない

ただ、ここに一つ難しさがあります。

意義は、意識しなければ見えてきません。意識されないまま働き続けると、仕事はいつしか「ただの作業」になってしまいます。

こんな話があります。

ー 中世のある町で、一人の旅人が、建設現場の前を通りかかりました。
同じようにレンガを積んでいる職人が3人います。
旅人が順番に声をかけました。「何をしているのですか?」

1人目の職人は、ぶっきらぼうに答えました。「見ればわかるだろう。レンガを積んでいるんだ」

2人目の職人は、少し考えてから答えました。「壁をつくっています。家族を養うためです」

3人目の職人は、目を輝かせてこう言いました。「大聖堂をつくっているんです。町の人々の心の拠り所となる場所を」 ー

3人は、同じ仕事をしています。でも、見えている「景色」がまったく違う。

3人目の職人は、誰かに「そう考えなさい」と命令されたわけではありません。自分の仕事の先にあるものを、意識していたのです。

そして、そういう「景色」は、誰かが言葉にして見せてくれることで、初めて気づけることも多いのです。

「意義を持て」と言っても、届かない理由

「意義」は、命令して持たせられるものではありません。

「仕事に誇りを持て」——そう言われても、人の心はなかなか動きません。むしろ「そんなこと言われても……」と、壁をつくってしまうことの方が多いのです。

では、どうすればいいのか。

「意義」は押しつけるものではなく、見えていなかった景色を一緒に眺めるように、伝えるものだと私は思っています。

「こういう見方があるよ」という視点を、さりげなく手渡すこと。

「あなたの仕事は、こんなふうに誰かの役に立っているんだよ」と伝えること。

それだけで、人の働き方が変わることがあります。

船のエンジンを動かしているのは、あなたかもしれない

以前、ある製造業の会社で研修をさせていただいたときのことです。

その会社では、精密な金属部品をつくっていました。ひとつひとつは小さなもの。若手の方々は毎日黙々と、その部品を研磨する作業を続けていました。

ある日、工場長がこんな話をしてくれました。

「うちがつくっている部品は、船のエンジンになくてはならないものなんだ。世界中を行き交うコンテナ船の、あのエンジンに入っている。だから精度が命で——そして、この精度で安定してつくれるのは、日本でもうちだけなんだよ」

そして、こう続けました。

「ここで研磨の仕事をしている者たちの技が、世界の物流を動かしているんだ」

その言葉を聞いて、私は思いました。

この工場長の視点が、日常の中で若手に届いているとしたら——毎日の研磨作業の「見え方」は、きっと変わるだろう、と。

「ただ部品を磨いている」のか、「世界の物流を支えている」のか。

同じ作業でも、見えている景色がまったく違うのです。

なぜ「意義」がそんなに大切なのか

心理学者のマーティン・セリグマンは、人が「幸福」を感じるための条件のひとつに「Meaning(意味・意義)」を挙げています。

自分のしていることが、何か大きなものとつながっている——その感覚は、人が困難に踏ん張るときの、静かな力になります。

逆に、意義を感じられないまま働き続けると、「なんのためにやっているんだろう」という虚無感が生まれ、やがて仕事への関心そのものが薄れていきます。

若手社員が「言われたことしかしない」「自分で考えて動かない」という状態は、やる気がないのではなく、意義が見えていないサインかもしれません。

「意義」を伝えるための3つの視点

① 仕事の「先にあるもの」を見せる

日々の作業は、どこかで必ず誰かの役に立っています。納品先、エンドユーザー、地域、社会——その「先にあるもの」を、具体的な言葉で伝えてみてください。「貢献」という抽象的な言葉ではなく、「この仕事があるから、あの人たちが助かっている」という、実感の持てる言葉で。顧客からの喜びや感謝の声を、そのまま届けてあげるのもよいかもしれません。

② 「あなただからできる」を伝える

同じ仕事でも、「誰でもいい」と感じながらやるのと、「あなたにやってほしい」と感じながらやるのでは、気持ちがまったく違います。その人の強みや特性と結びつけて、「あなたがいるから、この仕事がうまくいく」という言葉を届けてみてください。

「あなたにはこんな役割を担ってもらいたい」と伝えることも、立派な意義の手渡し方です。

③ 「なぜ、この会社はここにあるのか」を語る

会社の存在意義——創業の想い、誰のための会社なのか——を、日常の中でさりげなく語ることも大切です。ホームページに書かれた言葉ではなく、あなた自身の言葉で語られたとき、若手の心に届きやすくなります。

意義の核心は、「つながり」にある

3つの視点を振り返ってみると、どれも根っこは同じです。

「自分の仕事が、何か大きなものとつながっている」という感覚を、どう育てるか。

意義とは、スローガンでも理念の暗唱でもありません。日々の会話の中で、ふとした一言で伝わるものです。

「この仕事は、こんな人を助けているんだよ」

そのたった一言が、若手の中に、静かな誇りを芽生えさせることがあります。

「自分たちの仕事が、誰かにとってどんな意味を持っているか」
——それを、あなたはどんな言葉にして仲間に伝えますか?


次回は「自律」——若手が自分で考え、動き出せる環境をどうつくるか——についてお伝えします。

弊社ひとのわでは、こうした日々の関わり方から、組織の風土づくりまでをご支援しています。「まず話を聞いてほしい」という段階でも、お気軽にお問い合わせください。

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この記事を書いた人

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井坂 泰成

合同会社ひとのわ代表社員/組織開発ファシリテーター。一人一人が主体的に動いて協力する「自走型型組織」づくりの対話支援と人材育成を行っています。東京大学文学部卒。NHKディレクター、JICA、コンサルティング会社等を経て創業。神戸市在住。