あなたの仕事は何につながっていますか?
前回は「承認」——相手のことを「ちゃんと見ている」と伝えることの大切さについてお伝えしました。
今回は、第2の要素「意義」についてです。
意義とは、「自分の仕事が何かとつながっている」という実感です。
突然ですが、一つ質問があります。
あなたは、自分の仕事が何につながっていると思いますか?
精密な部品をつくることで、効率的なものづくりを支えているかもしれません。
利用者に寄り添う介護で、幸福な老後を支えているかもしれません。
弊社ひとのわでいえば、組織開発と研修の仕事が「組織に調和をもたらす」ことにつながっていると考えています。
自分たちの仕事が、何につながっているのか。それを言葉にすることが、仕事に「意義」を見出すということです。
意義が見出せれば、「やる気」が生まれてきます。
意義は、意識しなければ見えてこない
ただ、ここに一つ難しさがあります。
意義は、意識しなければ見えてきません。意識されないまま働き続けると、仕事はいつしか「ただの作業」になってしまいます。
こんな話があります。

ー 中世のある町で、一人の旅人が、建設現場の前を通りかかりました。
同じようにレンガを積んでいる職人が3人います。
旅人が順番に声をかけました。「何をしているのですか?」
1人目の職人は、ぶっきらぼうに答えました。「見ればわかるだろう。レンガを積んでいるんだ」
2人目の職人は、少し考えてから答えました。「壁をつくっています。家族を養うためです」
3人目の職人は、目を輝かせてこう言いました。「大聖堂をつくっているんです。町の人々の心の拠り所となる場所を」 ー
3人は、同じ仕事をしています。でも、見えている「景色」がまったく違う。
3人目の職人は、誰かに「そう考えなさい」と命令されたわけではありません。自分の仕事の先にあるものを、意識していたのです。
そして、そういう「景色」は、誰かが言葉にして見せてくれることで、初めて気づけることも多いのです。
「意義を持て」と言っても、届かない理由
「意義」は、命令して持たせられるものではありません。
「仕事に誇りを持て」——そう言われても、人の心はなかなか動きません。むしろ「そんなこと言われても……」と、壁をつくってしまうことの方が多いのです。
では、どうすればいいのか。
「意義」は押しつけるものではなく、見えていなかった景色を一緒に眺めるように、伝えるものだと私は思っています。
「こういう見方があるよ」という視点を、さりげなく手渡すこと。
「あなたの仕事は、こんなふうに誰かの役に立っているんだよ」と伝えること。
それだけで、人の働き方が変わることがあります。
船のエンジンを動かしているのは、あなたかもしれない
以前、ある製造業の会社で研修をさせていただいたときのことです。
その会社では、精密な金属部品をつくっていました。ひとつひとつは小さなもの。若手の方々は毎日黙々と、その部品を研磨する作業を続けていました。
ある日、工場長がこんな話をしてくれました。
「うちがつくっている部品は、船のエンジンになくてはならないものなんだ。世界中を行き交うコンテナ船の、あのエンジンに入っている。だから精度が命で——そして、この精度で安定してつくれるのは、日本でもうちだけなんだよ」
そして、こう続けました。
「ここで研磨の仕事をしている者たちの技が、世界の物流を動かしているんだ」
その言葉を聞いて、私は思いました。
この工場長の視点が、日常の中で若手に届いているとしたら——毎日の研磨作業の「見え方」は、きっと変わるだろう、と。
「ただ部品を磨いている」のか、「世界の物流を支えている」のか。
同じ作業でも、見えている景色がまったく違うのです。
なぜ「意義」がそんなに大切なのか
心理学者のマーティン・セリグマンは、人が「幸福」を感じるための条件のひとつに「Meaning(意味・意義)」を挙げています。
自分のしていることが、何か大きなものとつながっている——その感覚は、人が困難に踏ん張るときの、静かな力になります。
逆に、意義を感じられないまま働き続けると、「なんのためにやっているんだろう」という虚無感が生まれ、やがて仕事への関心そのものが薄れていきます。
若手社員が「言われたことしかしない」「自分で考えて動かない」という状態は、やる気がないのではなく、意義が見えていないサインかもしれません。
「意義」を伝えるための3つの視点
① 仕事の「先にあるもの」を見せる
日々の作業は、どこかで必ず誰かの役に立っています。納品先、エンドユーザー、地域、社会——その「先にあるもの」を、具体的な言葉で伝えてみてください。「貢献」という抽象的な言葉ではなく、「この仕事があるから、あの人たちが助かっている」という、実感の持てる言葉で。顧客からの喜びや感謝の声を、そのまま届けてあげるのもよいかもしれません。
② 「あなただからできる」を伝える
同じ仕事でも、「誰でもいい」と感じながらやるのと、「あなたにやってほしい」と感じながらやるのでは、気持ちがまったく違います。その人の強みや特性と結びつけて、「あなたがいるから、この仕事がうまくいく」という言葉を届けてみてください。
「あなたにはこんな役割を担ってもらいたい」と伝えることも、立派な意義の手渡し方です。
③ 「なぜ、この会社はここにあるのか」を語る
会社の存在意義——創業の想い、誰のための会社なのか——を、日常の中でさりげなく語ることも大切です。ホームページに書かれた言葉ではなく、あなた自身の言葉で語られたとき、若手の心に届きやすくなります。
意義の核心は、「つながり」にある
3つの視点を振り返ってみると、どれも根っこは同じです。
「自分の仕事が、何か大きなものとつながっている」という感覚を、どう育てるか。
意義とは、スローガンでも理念の暗唱でもありません。日々の会話の中で、ふとした一言で伝わるものです。
「この仕事は、こんな人を助けているんだよ」
そのたった一言が、若手の中に、静かな誇りを芽生えさせることがあります。
「自分たちの仕事が、誰かにとってどんな意味を持っているか」
——それを、あなたはどんな言葉にして仲間に伝えますか?
次回は「自律」——若手が自分で考え、動き出せる環境をどうつくるか——についてお伝えします。
弊社ひとのわでは、こうした日々の関わり方から、組織の風土づくりまでをご支援しています。「まず話を聞いてほしい」という段階でも、お気軽にお問い合わせください。

