【支援事例】人はどうすれば学び始めるのか?___場づくりのノウハウを少しだけご紹介 ― M社・対話型組織開発プログラム 第5回報告

組織づくりと人材育成のことなら、実績あるファシリテーターにお任せを。自走型組織、自律型組織への組織変革、組織開発、チームビルディング、リーダー育成、社員教育、会議・ミーティングの活性化を、対話を促進するプロのファシリテーション技術で実現します。心理的安全性を向上させ、指示待ち社員の主体性とやる気を引き出し、持続的に発展する強い組織づくりを伴走支援します。神戸を拠点に関西、東海、岐阜県、全国で対面・オンラインでの研修に対応しています。

愛知県の製造業M社の対話型組織開発プログラムの事例です。

以前は、第3回についてご報告しました。

「正解を探すよりも理解しあう」という言葉が生まれたあの日から、ワークショップを2回重ね、先日、第5回を実施しました。

今回のテーマは、「学びを深める」。

これまで出てきた課題に対して、各部門・経営層が、自らと部門の成長のために何をどう学んでいくか。

その計画を自分たちの言葉でつくる。それが今日のゴールでした。

まずは、「学ばなかったこと」から

計画を立てる、と聞くと、すぐに「目標」や「やること」から話し合いを始めたくなります。

でも今回、私はあえて遠回りをしました。

最初にお願いしたのは、計画づくりではありません。

わかっちゃいるけど、学ばなかった経験」を、一人ひとりに振り返ってもらうことでした。

人は、必要だとわかっていることを、なぜかやらないままにしていることがあります。

これは怠けているのではなく、たいてい「今のやり方のままでいい理由」を、本人も気づかないうちに抱えているからです。

実は、私の考えには理論的裏付けがあります。

ハーバード発の「イミュニティ・トゥ・チェンジ(変革への免疫)」という理論です。

人が、わかっているのに変われないのは、意志が弱いからではなく、変わらないことを守る「免疫」が働いているから、というのがこの理論の考え方です。

そして、その免疫を解くには、まず本人が自分の免疫に気づく必要があります。

だから私は、計画づくりより先に、この「気づき」から始めることにしました。

人を開くには、自分の「自己開示」から

そのために、まず私自身の「学ばなかった」話をしました。

大学時代に授業にろくに出ず、留年し、あげく卒業も危うくなったこと…。
今思えば、目標を見失っていたということもお話ししました。

決して格好いい話ではありません。

支援する側が先に格好悪い話をする(自己開示)ことは、心理的安全性をつくる一つの方法です。

自分をさらけ出すことで、「私もさらけ出していいんだ」と思わせることができます。

さらに今回は、社長や役員の方々にも、同じ問いに向き合っていただきました。

経営層が自分の学ばなかった経験を、自分の言葉で語る。

その姿を見て、社員の皆さんの自己開示も、一段と進んだように感じます。

問いはステップbyステップで

問いは、人生の話から仕事の話へ、少しずつ近づけていきました。

「人生で、わかっちゃいるけど学ばなかった経験は?」

「では、仕事の面で学ばなかった経験は?」

「なぜ、避けていたのでしょうか?」

いきなり仕事の失敗を聞かれると、人は身構えます。

まず誰もが持っている人生の話から始めることで、抵抗の少ないところから本音に近づいていきます。

これが、今回私が意識した場づくりの工夫です。

「窮地にならないと学ばない」——本人の口から出た気づき

この対話のあと、こんな言葉が並びました。

「いつも窮地になってから学ぶパターンだった。これからは、もっと前向きに学んでいきたい」

「必要性や危機感がないと学ぼうとしないことが、自分の課題だと思いました」

「必要にならなきゃ勉強をしなかった。それを必要だと自己暗示をかけて学んでいきたい」

誰かに指摘されたのではなく、自分自身の口から、自分の「学ばないパターン」が語られています。

そして、それに気づけたからこそ、「これからは学びたい」という意識が芽生えたのでした。

ここが、今日一番大事な瞬間だったと思っています。

人から言われたことより、自分で気づいて言葉にしたことの方が、人は大事にします。

自分で認めたからこそ、計画が自分たちのものになる

その後、各部門・経営チームは、自分たちの学び方を目標・内容・期間・手段として言葉にし、発表し合いました。

長年ベテランに偏っていた知識をどう共有するか、価格の考え方をどう揃えるか。

中身は部門ごとに違いましたが、どの計画にも共通していたのは、「やらされ感」のなさでした。

先に自分の学ばなかったパターンを認めているので、計画が他人事になりようがないのです。

とはいえ、今回の場で言葉にできたことと、それが実際に現場に根づくことは、別の話です。

自分の課題に気づいて言葉にする。ここまでが今日の成果です。

それが行動として定着するかどうかは、これからの実践と、次回の振り返りにかかっています。

次回は、この計画がどこまで実践されたかをご報告できればと思います。

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この記事を書いた人

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井坂 泰成

合同会社ひとのわ代表社員/組織開発ファシリテーター。一人一人が主体的に動いて協力する「自走型型組織」づくりの対話支援と人材育成を行っています。東京大学文学部卒。NHKディレクター、JICA、コンサルティング会社等を経て創業。神戸市在住。