ある会社の人事担当者から、こんなご相談を受けました。
「若手社員が、言われたことはやってくれるんです。でも、それだけで。自分から問題を見つけたり、改善策を考えたりすることがない。会議でも意見を出さない。どうしたら主体的に動いてくれるようになるのでしょう?」
御社ではいかがでしょうか?
思い当たるところはありませんか?
「主体性がない」は、本当に本人の問題か?
こういう相談を受けたとき、多くの職場では「やる気がない」「意識が低い」と本人の問題として捉えがちです。
そして、研修を受けさせたり、「もっと積極的にいこう」と声をかけたりする。
でも、当の若手社員に話を聞いてみると、違う景色が見えてくることが多いのです。
「私なんかが意見を言ってもいいのかわからない…」
「何か言って、マイナスに見られたくない」
「頑張っても、意味がない気がして…」
主体性がないのではなく、本人からすると、主体性を「出せない」状態になっている。
その原因は、本人の中ではなく、組織の関係性の中にあることが少なくありません。
お金や待遇だけでは、動機はつくれない
「じゃあ、給料を上げれば?」「休日を増やせば?」という声も聞こえてきそうです。
もちろん、適正な報酬や待遇の改善は必要ですし、それが整っていなければ不満は生まれます。
ただ、心理学者ハーズバーグの研究によれば、給与や労働環境といった条件は「不満をなくす要素」ではあっても、「やる気を生み出す要素」にはなりにくいと言われています。
言い換えると、給料が低ければ不満になるが、給料を上げてもそれだけでは主体的には動かない、ということです。
しかも、金銭・待遇の改善は経営判断が必要で、時間もかかります。
一方、現場の上司や人事担当者が今すぐ取り組めることがあります。それが、今回ご紹介する3つのアプローチです。
主体性を育てる3つの鍵
ひとのわでは、社員が主体的に動くためには、次の3つの要素が必要だと考えています。
① 承認——「頑張りを見てもらえている」という体験
「仕事が正確になってきたね」「対応が早くなったね」
こうした言葉を、あなたは上司・先輩から日常的にかけてもらった経験はありますか?
「君はいつも何か工夫をしているね」。
これは、ひとのわの代表社員である井坂が20代の頃に当時の上司からかけてもらった言葉ですが、今でもその時の嬉しかった感情とともに覚えています。
「あぁ、この人は見てくれている。大したことはできなくても、工夫を続けて頑張ろう」とやる気になりました。
人は、自分の努力や成長を認めてもらったとき、「頑張れば返ってくる」という感覚を得ます。
これを「精神的報酬」と言います。
これが、動こうとする力の土台になります。
承認とは、大げさな褒め言葉ではなく、相手の良さや変化に気づいて、伝えることです。
② 意義——「自分の仕事が、誰かの役に立っている」という実感
「あなたがこの部分を担当してくれているから、チームが助かっている」
「お客様からこんな声が届いた」
自分の仕事が会社や顧客にどうつながっているかを実感できると、仕事への姿勢が変わります。
意義とは、仕事の「目的地」と「自らの役割」を一緒に確かめることです。
③ 自律——「任せてもらえている」という信頼感
細かく指示を出し続けると、社員は「考えなくていい」と学習してしまいます。
逆に、「この範囲はあなたに任せる」と裁量を与えることで、自分で考え、判断する経験が積み重なります。
自律とは、放任ではなく、信頼を示しながら裁量を渡すことです。
三つに共通していること
承認・意義・自律、この三つに共通しているのは、「あなたのことを見ている」「あなたには価値がある」「あなたを信頼している」というメッセージを伝える行為だということです。
つまり、主体性を生み出す本質は「技術」よりも「関係性」にある。
研修や制度を整える前に、まずは日々の関わり方を少し変えてみる。それだけで、職場の空気が変わり始めることがあります。
次回から、この三つをそれぞれ掘り下げていきます。次回は「承認」——どのように相手の頑張りに気づき、伝えるか——について、具体的な場面とともにお伝えします。
職場の若手社員に、最後に「成長したね」と伝えたのはいつでしたか?
弊社ひとのわでは、こうした現場での関わり方から、組織全体の風土づくりまでをご支援しています。
「まず話を聞いてほしい」という段階でも、お気軽にお問い合わせください。

