「わかった?」では、何もわからない—仕事の教え方の基本(「仕事の教え方」シリーズ1/4)

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「…これはこうして、そこはこうする。わかった?」

「…あ、はい、大丈夫です」

こんな教え方、あなたの職場ではやっていませんか?

教えた側は「ちゃんと伝えた」と思っています。

でも実際には、教わる側はわかっていなくて、ミスが起きたりします。

教えた人は「あんなに丁寧に教えたのに……」とため息をつく。

でも、こういう場合の本当の問題は「教わる側」ではなく、教える側の「教え方にあることがほとんどです。

「わかった?」は、実は何も聞いていない

何かを一頻り教えた後に、「わかった?」と聞くことは、誰しもやってしまいがちなことです。

しかし、実際には、これでは、相手が本当に理解したかどうかを確かめることはできません。

もし、「はい、わかりました」と相手が答えても、実際のところはわかりません。

わからないと言えない、質問すると怒られるかもしれない、こんなこともわからない人だと思われたくない。

教わる側には、そんな「不安」の心理が働きます。

年齢が若かったり、入社したばかりの人ならなおさらです。

最近の若い方はよく「大丈夫です」と答えますが、それが必ずしも「理解した」と言うことを意味するとは限りません。

ということを、教える側はよくよく踏まえておく必要があります。

教える側がやりがちな「NGパターン」

教える側が無意識にやってしまいがちな行動と言葉には、こんなことがあります。

【行動のNG】

  • 相手を安心させない 「一度しか言わないから、しっかり聞いて」——こう言われた瞬間、相手は緊張します。緊張した状態では、情報は頭に入りません。逆に「わからなかったら何回でも聞いて」と一言添えるだけで、相手の受け取り方はまったく変わります。
  • 一度に全部言う 5つの手順を一気に説明して「わかった?」と聞く。これでは前半はもう忘れています。
  • 相手の反応を見ずに話し続ける こちらのペースで説明を進め、相手が困惑していてもお構いなし。「独演会」になってしまっています。
  • 質問する機会を与えない 「じゃあやってみて」と畳み掛けてしまう。「何か聞きたいことある?」の一言が、後のミスを防ぎます。
  • 理解度を確認しない    何を理解し、していないかを確認しないまま終わる。

【言葉のNG】

  • さっきも言ったよね?」 一度言った=伝わった、ではありません。この言葉は相手の「聞けない」状態を加速させます。
  • そんなこともわからないの?」 知識には「落差」があります。わからないのは当然です。この言葉が出た時点で、学びは止まります。
  • これができないとダメだよ」 プレッシャーは、緊張を生み、思考を止めます。
  • 普通はこうするんだよ」   その「普通」は、あくまで経験者の普通です。初めて聞く人に「普通」はありません。
  • 「早く覚えてね」       悪気はなくても、相手にプレッシャーを与えるだけの余計な一言です。 

心当たりはありませんでしたか?

どれも悪意のある言葉ではありません。でも、受け取る側には深く刺さっています。

「知っている人」と「知らない人」の間には、深い落差がある

ここに、教える側が見落としがちな根本的な事実があります。

こちらはすでに知っている。向こうはまだ知らない。

当たり前のことのようですが、これが実はとても大事な前提です。

知識や経験が増えると、人は「知らない状態」を忘れてしまいます。

この「知っている人と知らない人の落差」を自覚することが、教え方の出発点です。

さらに言えば、どんなに丁寧な説明でも、一度に頭に入る情報量には限界があります。

特に初めて聞く内容は、理解するのに時間がかかります。

かつ、それが視覚資料なしに「口頭だけの説明」の場合、記憶に残すのは困難です。

「説明した=伝わった」は、残念ながら成り立ちません。

本当に有効な「確認」とは何か

では、どうすればいいのでしょうか。

まず最初のステップは、問いを変えることです。

「わかった?」ではなく、「わかりにくかったところはある?」と聞く。

「わかった?」には「わかりました」しか答えにくいですが、「わかりにくかったところはある?」なら、素直に「ここが少し……」と言いやすくなります。小さな一言の差が、相手の「言える」状態をつくります。

次のステップは、相手に説明させることです。

「今説明したことを、分かった部分だけでもいいから自分の言葉で教えてみて」と伝えてみましょう。説明できるということは、本当に理解しているということです。逆に言えば、うまく説明できない部分が、まだ伝わっていない部分です。

他にも、こんな確認の仕方が有効です。

  • 「今の作業のポイントをあげてみてくれる?」
  • 「間違えそうな部分はどこだと思った?」

「難しそうな部分」を言語化させることで、潜在的な「わからない」を引き出せます。

「小分け」と「繰り返し」が定着をつくる

また、説明は「一気に全部」より「小分けにして確認しながら」の方がはるかに効果が高いです。

手順が5つあるなら、1つ説明して確認、次を説明して確認——という積み上げ方をします。「全部説明してからまとめて確認」では、前半はもう忘れています。

そして「1回教えたら終わり」ではなく、翌日・翌週に「あれ、どうだった?」と確認を重ねることで、記憶は定着していきます。教えることは、一度のイベントではなく、プロセスです。

知識の一早い定着には、「短期記憶を繰り返す」ことが有効です。

今日から使える「正しい教え方」チェックリスト

NGパターンの逆が、そのまま有効な教え方になります。

【行動】

  • 「わからなかったら何回でも聞いて」と最初に伝え、安心できる場をつくる
  • 手順をひとつずつ小分けにして、確認しながら進める
  • 相手の表情や反応を見ながら、ペースを合わせて話す
  • 説明の後に「何か聞きたいことある?」と質問の機会をつくる
  • 最後に、「じゃ、ポイント・手順を説明してみて」と、相手にアウトプットの機会を与える。

【言葉】

  • 「さっきも言ったよね?」→「もう一度一緒に確認しようか」
  • 「そんなこともわからないの?」→「そこ、わかりにくいよね。私も最初そうだったよ」
  • 「これができないとダメだよ」→「少しずつできるようになれば大丈夫だよ」
  • 「普通はこうするんだよ」→「この仕事では、こうするのが基本なんだよ」
  • 「早く覚えてね」→「その調子で覚えてね」

まとめ:教えることは「伝えた」ではなく「伝わった」で完成する

  • 「わかった?」は確認になりません。まず**「わかりにくかったところはある?」**と聞きましょう
  • 知っている人と知らない人の間には深い落差があります。それを自覚することが出発点です
  • 情報は一気に入りません。小分けにして確認しながら進めましょう
  • 理解は繰り返しの確認によって初めて定着します
  • 安心できる場をつくることが、すべての前提です

「わかった?」ではわからない。
「伝えた」は「伝わった」じゃない。

これを頭に置くだけで、あなたの教え方は今日から変わります。


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この記事を書いた人

組織づくりと人材育成のことなら、実績あるファシリテーターにお任せを。自走型・自律型組織への組織変革、チームビルディング、リーダー育成、社員教育、会議・ミーティングの活性化をプロのファシリテーションの技術で実現します。心理的安全性を向上させ、社員の主体性とやる気を引き出し、持続的に発展する強い組織づくりを伴走支援します。神戸を拠点に関西、東海、全国で対面・オンラインでの研修に対応しています。

井坂 泰成

合同会社ひとのわ代表社員/組織開発ファシリテーター。一人一人が主体的に動いて協力する「自走型型組織」づくりの対話支援と人材育成を行っています。東京大学文学部卒。NHKディレクター、JICA、コンサルティング会社等を経て創業。神戸市在住。