これまでの3回で、「承認」と「意義」についてお伝えしました。
承認によって「自分はやれる」という自信の芽が育ち、意義によって「この仕事は誰かの役に立っている」という感覚が根を張る。
最終回の今回は、「自律」です。
自律とは、「主体的であること」
「主体的に動かない」という悩みから始まったこのシリーズ。自律は、その答えに当たる部分です。
承認と意義で土台をつくり、そこに「自律」が加わったとき、人は初めて自分の頭で考え、自分の足で動き始めます。
では、自律はどうすれば育つのでしょうか?
「任せる」ことが、自律を育てる
自律を育てる上でいちばん大切なことは、「任せる」ことだと私は思っています。
役割を与え、信頼して任せる。
以前、支援していたある製造業の中小企業でのことです。
新入社員が仕事を教わるたびに、その作業手順のマニュアルをつくってもらうという取り組みをしました。
私もそばでサポートしながら、一緒に進めていきました。
最初の一冊ができたとき、上司は言いました。
「よくできた。この感じで、他の手順のマニュアルもつくってほしい。あなたがマニュアル制作の担当だ」と。
その新人は、みるみる変わっていきました。
マニュアルをつくるために仕事をより深く理解しようとするようになり、自信も出てきた。
「自分には役割がある」という感覚が、主体性に火をつけたのです。
任せる方法は色々ある
「お客様へのフォローアップメールのテンプレートをつくってみて」と始めて、やがて「顧客対応の窓口をあなたに担ってほしい」と広げていく。
月次データをまとめてもらうことから始めて、やがてレポートそのものを任せる。新人の受け入れを一緒にやってもらい、次の年には担当してもらう。
どれも、小さな「任せる」から始まる話です。
「なんでも任せると、大変なことにならないか」
こう心配される方は多いのですが、もちろん、最初から何もかも任せる必要はありません。
範囲を決め、小さなことから少しずつ任せていく。
そして、振り返りの場をつくり、丁寧にフィードバックをする。それだけで十分です。
任せることには、リスクもある
ただ、正直に言うと——失敗することもあります。
私がアフリカで開発援助の仕事をしていた頃の話です。
本人の希望に応えて昇格させたスタッフが、あっという間にお金を横領しました(笑)。
自分の不明を恥じて、そのスタッフを解雇せざるを得ませんでした。
一方、会計の経験は全くなかったけれど、人柄を見て経理の仕事を任せた若者がいました。
彼女は見事に期待に応えてくれ、放っておいてもきちんと帳簿をつけてくれました。
任期が終わるとき、成長した彼女から「あなたは私によくしてくれた」と感謝されました。
信頼が裏切られることもある。でも、信頼に応えてくれることも、ある。
「失敗しても大丈夫な範囲で任せる」という心の準備をしながら、それでも信じて任せてみる。それが、自律を育てる上司の姿勢だと思います。
本当の「自律」とは
最後に、私自身のことを話させてください。
同じアフリカ時代、誰からも言われていないのに、自分でやったことがあります。
前任者の時代から、事務所が職員に非公式で貸していたお金が、帳簿にそのまま残っていました。ずっと放置されていたものです。
任期の終わりが近づいた頃、「これを後任に残してはいけない」と思いました。
面倒な話だし、声をかけるのも気まずい。
でも、一人ひとりのスタッフに話して、毎月少しずつ返してもらい、最終的に帳消しにしました。
嫌なことでも、誰からも言われなくても、自分がすべきだと思ったことをする。
これが、本当の「自律」だと私は思います。
そして、若手社員にそうなってもらうことが、育成のゴールです。
自律は、伝えるものではなく、見せるもの
では、どうすれば社員はそうなれるのか。
説教では、伝わりません。「主体的であれ」と指示するのは矛盾しています。
自分がすべきだと思ったことを、誰かに言われる前にやる。
そういう姿を、経営者や上司が日々の仕事の中で見せていくこと——それが、一番の答えだと私は思っています。
「あなたは、誰からも言われる前に、動いていますか?」
このシリーズを通じて、「承認・意義・自律」という3つの視点をお届けしてきました。
どれも、特別なスキルではなく、日々の関わり方の中にあるものです。
まず一つだけ、試してみてください。
弊社ひとのわでは、こうした日々の関わり方から、組織の風土づくりまでをご支援しています。
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