若手社員が主体的に動かない——現場でできる3つのアプローチ(第2回:承認)

前回は、若手社員が「主体的に動けない」状態になる背景と、その打開のために必要な3つの要素——「承認・意義・自律」——についてお伝えしました。

今回は、その最初の一歩、「承認」について掘り下げていきます。

承認とは、「見ていること」を伝えること

「最近、褒めていますか?」と聞くと……

研修や勉強会でこの質問をすると、多くの方が少し苦笑いをされます。

「褒めようとは思うんですが、照れてしまって……」
「何を褒めていいのか、よくわからなくて」
「下手に褒めると、調子に乗りそうで」

褒めることへの照れ、そして「どう伝えたらいいか」がわからないという声は、とても多いのです。

ただ、ここで一つお伝えしたいことがあります。

「承認」とは、褒めることではありません。

承認とは、「見ていること」を伝えること

承認の本質は、相手の頑張りや変化に気づいて、それを言葉にして届けることです。

大げさに褒め称えるのではなく、「あなたのことを、ちゃんと見ている」と伝えること。

それだけで、人は大きく変わります。

たった一言が、主体性に火を灯す

私自身のエピソードをお話しします。

まだ20代の頃、当時の上司に、ある日こんな言葉をかけられました。

「君は、いつも何か工夫しているね」

たったこれだけです。

でも、私はとても嬉しかったことを今でも覚えています。
「あ、この人は私のことを見てくれている」。
そう思えたからです。

自分でも、小さなことでも「もっとよくできないか」と思って工夫をしていた自覚はありました。でもそれを誰かが見ていてくれるとは、思っていなかった。

「そうだ、大したことはできなくても、私は工夫を頑張って続けよう」

そう思えました。

今思えば、私の主体性に火が灯った瞬間です。
上司のあのたった一言が、そうしてくれたのです。

なぜ、承認がそんなに大切なのか

心理学者のウィリアム・ジェームズはこんな言葉を残しています。

「人間の本質の中に、認められたいという飢えがある」

「見てもらえている」という感覚は、人が何かに向かって動こうとする力の、根っこにある部分です。

これを感じられないまま働き続けると、やがて「頑張っても無駄だ」という学習性無力感に陥ることがあります。

主体的に動かない若手社員の多くは、やる気がないのではなく、頑張ることへの手応えをなくしているのかもしれません。

「承認」の3つのポイント

① 観察する
承認の言葉は、観察なしには生まれません。
相手の仕事ぶり、先週との違い、小さな変化——そこに目を向けることが出発点です。
データなしに何も言えないのと同じで、見ていなければ、伝えられることは何もありません。

② 「事実」を具体的に伝える
「すごいね」「頑張ったね」ではなく、「この資料の構成が、とても読みやすかった」というように、何がよかったかを具体的に。
具体的であるほど、相手に届きます。

③ 本当に心が動いた時に伝える
無理に持ち上げようとする必要はありません。
「お世辞を言わないといけない」と思うと、かえって言葉が空回りします。
心が動いた瞬間——「あ、変わったな」「これはよかった」と感じたそのタイミングに、素直に伝える。それだけで十分です。

承認の核心は、「関心」にある

3つのポイントを振り返ってみると、どれも根っこは同じです。

相手のことを、ちゃんと気にかけているかどうか。

承認とは、技術ではなく、関心の表れです。
上司や先輩が部下に関心を持ち、その人の変化や努力に目を向けているとき、言葉は自然と生まれてきます。

逆に言えば、どんなに上手な言い回しを覚えても、関心がなければ言葉は届きません。

「自分はあの人のことを、どれだけ見ているだろう?」

そこからが、承認の始まりです。

次回は「意義」——自分の仕事が誰かの役に立っていると実感できる場をどうつくるか——についてお伝えします。

弊社ひとのわでは、こうした日々の関わり方から、組織の風土づくりまでをご支援しています。
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この記事を書いた人

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井坂 泰成

合同会社ひとのわ代表社員/組織開発ファシリテーター。一人一人が主体的に動いて協力する「自走型型組織」づくりの対話支援と人材育成を行っています。東京大学文学部卒。NHKディレクター、JICA、コンサルティング会社等を経て創業。神戸市在住。